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3-19 DV男、遠藤との対決 3

last update Last Updated: 2025-06-23 16:24:23

「お前だな? 美由紀の電話に出た男は.」

遠藤はじろりと航を睨みつけ、次に周りにいた美由紀たちを順番に見渡した。

「お前……こいつら全員たぶらかしたのかよ?」

すると航は不敵に笑った。

「たぶらかす? それはこっちのセリフだ。お前が彼女たち全員をたぶらかしたんだろう?」

「な、何だと!?」

遠藤は凄みを利かせた。

「まあ、落ち着け。ここは人目があって騒がしい。とりあえず上野公園にでも行かないか?」

航が肩をすくめる。

「ああ……そうだな。俺もちょうどそれを考えていたんだ。それじゃ行くぞ」

こうして6人は無言で上野公園へと向かった――

****

 弁天門をくぐり、6人は人気の無い場所までやってきた。

「よし、この辺でいいだろう」

航は足を止めた。

「ああ……そうだな」

遠藤は頷き、美由紀をジロリと見た。

「おい、美由紀……てめえだな? 昔の男に泣きついたな?」

美由紀はビクリとなって俯いた。すると航は首を振る。

「いや、それは違うな。俺の家業は興信所だ。それで依頼してきただけだ。お前に酷いDVを振るわれているから別れたいってな」

「!」

遠藤は恐ろしい目つきで航を睨み、そして次にアキに目を向けた。

「おい、アキ……。おまえ、どういうことだよ。何でこの男と一緒にいるんだよ」

アキはビクリとなったが震え声で言った。

「こ、この男の人が……と、突然訪ねてきたんです……。たっくんのことを聞きに……」

「はああ!? おまえ! ふざけるなよ! 調子こきやがって! お前みたいなデブ、俺以外に誰が相手にしてくれるって言うんだよ!? それにな、カナ! サチ! お前らもだ! お前たちみたいな根暗な女、俺だから付き合ってやったんじゃねえか!」

激しい罵声を浴びせる遠藤。彼女たちはすっかり怯えて震えている。

「やめろ。これ以上彼女達を脅すな。お前が全員にDVを振るっていたのは事実だ。今すぐ全員とこの場で別れろ」

航は一歩前に進み出た。

「はあ!? 俺がDVをしていた証拠でもあるって言うのかよ? それになあ……あいつらは全員俺の金づるなんだよ! 誰が別れるか!」

「ひ、酷い……」

ついにアキが泣き出した。

「うるせえ! すぐ泣きやがって……このデブが!」

遠藤は近くにあった木を蹴りつけた。

「おい、てめえ……」

遠藤は再び航を睨みつける。

「何だよ」

「美由紀の男だったんなら聞いてるんだろ?
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